会社でMicrosoft Copilotを使い始めると、画面の緑の盾マークや「エンタープライズデータ保護」という言葉が気になるかもしれません。
結論から言うと、Copilotのエンタープライズデータ保護(EDP)は、職場・学校アカウントで使うCopilotの入力と回答を、社内のメールやファイルと同じ契約で守る仕組みです。緑の盾は、その保護が効いている目印です。
この記事では、盾マークの見方から、守られる範囲と守られない範囲までを整理します。どこまで業務の情報を入れてよいか、自分で判断できるようになります。
Copilotのエンタープライズデータ保護とは契約で守る仕組み

Copilotのエンタープライズデータ保護(EDP)は、職場・学校アカウントで使うCopilotの入力と回答を、ExchangeのメールやSharePointのファイルと同じ契約条件で守る仕組みです。新しい機能や有料のオプションではなく、組織向けの契約に含まれる約束の総称です。
Microsoft Learnのエンタープライズデータ保護のページは、EDPをデータ保護補遺(DPA)と製品条件に基づく管理と約束だと説明しています。データ保護補遺は、Microsoftが顧客のデータをどう扱うかを定めた契約文書です。組織で使うCopilotにはこの補遺が適用され、Microsoftは顧客のデータを預かって処理する立場になります。
対象は、Microsoft Entra ID(職場・学校のアカウント)でサインインした利用者です。Microsoft LearnのCopilot Chatのよくある質問によると、Entraアカウントでサインインすれば、IT管理者が何も操作しなくてもEDPが提供されます。追加料金も要らず、無料で使えるMicrosoft 365 Copilot Chatの使い方で紹介している画面にも同じ保護が付きます。
社内で安全性を説明するときは、Microsoft Learnの原文を一緒に示すと話が早く進みます。

Copilotの緑の盾マークは保護が効いている印

Copilotの画面に緑の盾マークが出ていれば、その会話にはエンタープライズデータ保護が適用されています。盾は職場・学校アカウントでサインインしたときだけ表示され、個人のアカウントでは出ません。
盾のほかにも、画面には職場用と個人用を見分けるための手がかりがあります。表示の場所と、盾が出ないときの対処を順に確かめておきましょう。
盾は画面上部の新しいチャットの横に出る
Microsoft Learnのプライバシーと保護のページによると、Microsoft 365 Copilot Chatは画面上部の[New Chat]ボタンの横に緑色のシールドを表示します。この表示で、エンタープライズデータ保護が適用されていることを利用者に明示しています。
日本語の画面では、新しいチャットを始めるボタンの近くを見てください。ボタンの名前や配置は画面の更新で変わることがあるため、盾が見当たらないときは次の見分け方もあわせて使います。
職場ラベルと背景色でも見分けられる
Microsoft LearnのCopilot Chatの管理のページは、職場用と個人用を見分ける手がかりを3つ挙げています。
- アカウントの種類ごとに異なる背景色
- ユーザー プロファイルの下の「職場」ラベル
- 職場アカウントの画面に出る緑のデータ保護シールド
Copilotのアプリには、職場・学校アカウントと個人のMicrosoftアカウントのどちらでもサインインできます。チャットやファイル、保護の内容はアカウントごとに分かれているので、ナビゲーションウィンドウのプロフィールの下に「職場」と出ているかを確かめると確実です。
盾が出ないときは職場アカウントで入り直す
盾が出ないときは、個人のMicrosoftアカウントでサインインしている可能性が高いです。いったんサインアウトし、会社から配られた職場アカウントでサインインし直してください。
Microsoft Edgeのサイドバーから使う場合も同じで、Entraアカウントでサインインしているときだけ保護が適用されます。会社によっては、管理者が個人アカウントでのサインイン自体を制限している場合もあります。
職場アカウントで入っても盾が出ないときは、自分で設定を変えずに社内の管理者へ相談しましょう。サインインそのものがうまくいかないときは、Copilotにサインインできないときの対処法を確認してください。

Copilotに入れた内容は社内データと同じ水準で守られる

エンタープライズデータ保護のもとでは、Copilotに入力した内容と回答は、AIの学習に使われず、暗号化して組織ごとに分けて保管されます。Copilotが使える社内データも、自分の権限で見られる範囲に限られます。
守られる中身は、学習・保管・権限・著作権の4つに分けると整理しやすくなります。
入力も回答もAIの学習に使われない
Microsoft Learnのエンタープライズデータ保護のページによると、プロンプトと応答、Microsoft Graph経由で読んだ社内データは、AIの基礎モデルの学習に使われません。Microsoft Graphは、メールやファイルなどの社内データにCopilotがアクセスするための仕組みです。
Microsoft LearnのCopilot Chatのよくある質問は、データがOpenAIで使われることも、OpenAIのモデルの学習に使われることもないと説明しています。チャットにアップロードしたファイルも自分のOneDrive for Businessに保存され、アップロードしたファイルもモデルの学習には使われないとされています。
暗号化して組織ごとに分けて保管される
Microsoft Learnによると、データは保存中も転送中も暗号化され、ほかの会社のデータとは分けて扱われます。厳格な物理的セキュリティの管理も行われています。
入力した内容と回答は、組織のMicrosoft 365の中に保存されます。プライバシーと保護のページは、プロンプトと応答の両方が組織のテナントのExchangeに保存されると説明しています。テナントとは、会社ごとに用意されたMicrosoft 365の契約環境のことです。
見られる範囲は自分の権限までに限られる
Copilotは、利用者がもともと開けるファイルやメールの範囲でしか社内データを使いません。Microsoft LearnのCopilot Chatの概要のページも、Copilotが新しくアクセス権を広げることはないと明記しています。
ファイルに付けた秘密度ラベル(社外秘などの分類ラベル)や、保存期間のルールもCopilotに引き継がれます。ただし、どこまで細かく管理できるかは会社が契約しているプランによって変わります。
生成物の著作権の請求にも備えがある
エンタープライズデータ保護には、AI特有のリスクへの備えも含まれます。Microsoft Learnによると、有害な内容の生成や、プロンプトインジェクション(AIに隠れた指示を読ませる攻撃)を防ぐ仕組みがあります。
著作権の面では、保護された素材の検出と、お客様著作権コミットメントが用意されています。後者は、Copilotの生成物を使ったことで第三者から著作権の請求を受けた場合に、Microsoftが顧客を守る約束です。
Copilotの入力内容は監査のために記録される

Copilotに入力した内容と回答は、監査や電子情報開示のために組織の中に記録・保持されます。「AIの学習に使われない」ことと「誰にも見られない」ことは別の話です。
Microsoft LearnのCopilot Chatのよくある質問によると、エンタープライズデータ保護のもとでは、プロンプトと応答がログに記録・保持されます。記録は、監査や電子情報開示、Microsoft Purviewの管理機能に使われます。電子情報開示とは、訴訟や調査のときに社内のデータを検索して提出できるようにする仕組みです。
つまり会社のアカウントでの入力は、メールと同じく業務の記録として残ると考えておくのが安全です。私的な相談や、社内規則で入力を禁じている情報は入れないようにしましょう。自分の会話を消したいときは、Microsoft Copilotの履歴を削除する手順が参考になります。
CopilotのWeb検索はエンタープライズデータ保護の外で扱われる

CopilotがWeb検索のためにBingへ送る検索語は、エンタープライズデータ保護とは別の規約で扱われます。ただし送られるのはプロンプトから作った数語だけで、名前や会社の識別子、ファイル全体は含まれません。
Microsoft Learnのエンタープライズデータ保護のページによると、Bing検索はMicrosoft 365とは別に動くサービスです。検索語はMicrosoftのサービス規約とプライバシーに関する声明の対象になり、Microsoftは独立した立場でデータを扱います。検索語は広告主と共有されず、AIの学習にも使われません。
プライバシーと保護のページは、Bingに送られない情報を次のように挙げています。
- ユーザー名やドメインなどの識別子
- 短い質問を除くプロンプトの全文
- アップロードしたファイルの全体
実際に送られた検索語は、回答の引用の欄に表示されます。社外に出したくない語句が検索語に入っていないかは、回答の引用で確かめられます。具体的な検索語の例は、公式のページで確認できます。

Copilotは無料版でも有料版でも同じ保護が付く

エンタープライズデータ保護は、無料のMicrosoft 365 Copilot Chatにも、有料のMicrosoft 365 Copilotにも同じように付きます。Microsoft LearnのCopilot Chatの概要のページにある比較表では、エンタープライズデータ保護の欄はどちらも「はい」です。
Copilot Chatは、Microsoft 365のサブスクリプションを持つ組織であれば自動的に含まれます。Entra IDでサインインしたCopilot Chatには広告も表示されません。
有料版との違いは保護ではなく、社内のメールや会議、ファイルを横断して答えられるかどうかです。無料版でも、ファイルをアップロードすればその内容について質問できます。課金するかどうかの判断は、Microsoft Copilotの無料版と有料版の違いで整理しています。

Copilotのエンタープライズデータ保護でも防げないこと

エンタープライズデータ保護は契約上の保護で、使い方の誤りまでは防げません。個人アカウントでの利用、社内の広すぎる共有設定、外部のエージェントの扱いは、利用者と管理者が自分で気をつける必要があります。
個人アカウントで使うと保護の外になる
個人のMicrosoftアカウントでサインインしたCopilotには、エンタープライズデータ保護は適用されません。Microsoft LearnのCopilot Chatの管理のページによると、保護の内容はサインインしたアカウントごとに分かれています。
Microsoftの公式サポートのプライバシーFAQでは、Entra IDでサインインした利用者は個人向けCopilotのAI学習の対象外です。一方、個人のMicrosoftアカウントでは、会話を学習に使うかどうかを利用者が設定で管理します。
業務の情報は必ず職場アカウントのCopilotに入れると決めておきましょう。個人のCopilotで学習を止める手順は、Copilotに学習させない設定方法で解説しています。
広すぎる共有設定までは守ってくれない
Copilotは利用者が開けるデータの範囲で答えるため、社内の共有設定が広すぎると、本来見えるべきでない資料まで回答に出てきます。Microsoft Learnのセキュリティのページも、共有されすぎたコンテンツはCopilotの結果に影響し、リスクを高めると注意しています。
エンタープライズデータ保護は社外への流出を防ぐ約束で、社内の見えすぎは管理者の権限整理で防ぐものです。Microsoft Purviewのデータ損失防止(DLP)を使えば、秘密度ラベルの付いたファイルをCopilotの回答に使わせない設定もできます。社内の見えすぎを防ぐ具体策は、Microsoft 365 Copilotの情報漏洩対策にまとめています。

エージェントは個別の規約を確かめる
Copilotの中で使うエージェントは、作った会社によってデータの扱いが異なる場合があります。Microsoft Learnのエンタープライズデータ保護のページは、エージェントを使うときはそのプライバシーに関する声明と利用規約を確かめるよう案内しています。
社外の会社が提供するエージェントは、社内の情報を渡す前に、どこにデータが送られるかを規約で確かめるようにしてください。判断に迷うエージェントは、管理者に使ってよいかを確認してから使うのが安全です。
Copilotのエンタープライズデータ保護に関するよくある質問
Copilotのエンタープライズデータ保護を使うのに追加料金はかかりますか?
かかりません。エンタープライズデータ保護は、Microsoft 365のサブスクリプションを持つ組織で使えるMicrosoft 365 Copilot Chatに追加料金なしで付きます。有料のMicrosoft 365 Copilotを買わなくても、職場・学校アカウントでサインインすれば同じ保護が適用されます。
Copilotにアップロードしたファイルはどこに保存されますか?
自分のOneDrive for Businessに保存されます。保存したファイルは自分でいつでも削除でき、エンタープライズデータ保護の約束に従ってAIモデルの学習には使われません。Web検索のためにBingへファイル全体が送られることもありません。
Copilotのエンタープライズデータ保護が付くと広告は表示されますか?
表示されません。Microsoft Entra IDでサインインして使うMicrosoft 365 Copilot Chatは、仕事と教育向けに広告なしの画面で提供されます。広告が出る場合は、個人のMicrosoftアカウントでサインインしている可能性があるので、アカウントを確かめてください。
Copilotに入力した内容はOpenAIに渡りますか?
渡りません。Microsoft LearnのCopilot Chatのよくある質問は、Copilot Chatのデータは OpenAI で使用できず、OpenAI のモデルの学習にも使われないと説明しています。Copilotの回答の生成にOpenAIのモデルが使われていても、入力内容はMicrosoftの契約のもとで扱われます。
Copilotのエンタープライズデータ保護は管理者が設定する必要がありますか?
必要ありません。Microsoft Entraアカウントでサインインした利用者には、IT管理者が何も操作しなくてもエンタープライズデータ保護が提供されます。管理者が決めるのは、Web検索の可否や個人アカウントでのサインインを許すかどうかなど、使い方の範囲です。
まとめ:Copilotは緑の盾を確かめてから使う

Copilotのエンタープライズデータ保護は、職場・学校アカウントで使うときに自動で付く契約上の保護です。画面に緑の盾と「職場」ラベルが出ていれば、入力した内容は学習に使われず社内データと同じ水準で守られます。
使うたびに意識したいのは、次の3点です。
- 業務では職場アカウントでサインインし、盾を確かめる
- 入力した内容は業務の記録として残ると考える
- Web検索の検索語やエージェントの規約にも目を向ける
サインインの方法や有料版の要否を確かめたいときは、次の記事も参考になります。
