2025年12月は、AI業界にとって「技術の実用化」と「社会ルールの策定」が同時に進んだ月となりました。
「次世代モデル一斉刷新」で技術競争が激化した11月に対し、12月はそれらの新技術を実際の業務フローや社会インフラにどう組み込むかという「深化」の動きが見られました。特に動画生成AIがプロフェッショナルの制作ツールと連携したことや、日本政府によるガイドライン・基本計画の決定は、2025年を締めくくり、来たる2026年の「AI社会実装元年」を予感させる重要な動きです。
2025年12月の主要AIニュース
それでは、2025年12月に起こった主要なAI関連ニュースを時系列でご紹介します。
1:【新モデル】OpenAI、「GPT-5.2」を発表(12月11日)
OpenAIが、GPT-5系のアップデートとなる「GPT-5.2」を発表しました。劇的な機能追加というよりも、実運用におけるレスポンスの安定性や推論精度の改善が強調されています。
企業にとっては、現在稼働しているプロンプトやRAG(検索拡張生成)システムの再検証を行うタイミングです。コストパフォーマンスと精度のバランスを見直し、既存モデルから置き換えるべきか、あるいは併用すべきかの判断が求められます。
出典:OpenAI「Introducing GPT-5.2」
2:【開発実装】OpenAI、コーディング特化「GPT-5.2-Codex」を発表(12月18日)
エンジニアリング領域に特化した「GPT-5.2-Codex」が登場しました。IDE(統合開発環境)との連携強化や、コードレビュー、テスト自動生成の精度向上が図られています。
開発現場にとっては、GitHub CopilotやClaude Code、Gemini Code Assistといった競合ツールとの「比較検討」が避けられないフェーズに入りました。導入に際しては、純粋なコード生成精度だけでなく、セキュリティ権限やログ管理などのガバナンス面が選定の鍵となるでしょう。
出典:OpenAI「Introducing GPT-5.2-Codex」
3:【新モデル】Google、高速・低コストな「Gemini 3 Flash」を発表(12月中旬)
GoogleがGemini 3シリーズの軽量版「Gemini 3 Flash」を発表しました。Geminiアプリ等のプロダクト展開を含め、圧倒的な処理速度と実用性を前面に打ち出しています。
ChatGPT系のモデルと並ぶ有力な選択肢として、特にコストやレイテンシ(反応速度)が重要視される業務での採用が進むと考えられます。メールの要約やカスタマーサポートの一次対応など、即時性が求められるタスクでの乗り換え検討が進みそうです。
出典:Google「Gemini 3 Flash: frontier intelligence built for speed」
4:【プラットフォーム】Google、「Gemini Drop」で機能追加を束で投下(12月19日)
Geminiの月次アップデート「Gemini Drop」として、複数の新機能が一括で発表されました。モデル自体の性能向上だけでなく、スマホやPCでの使い勝手を向上させるUX(ユーザー体験)の改善が含まれています。
これはモデル単体の性能競争から、「実際のワークフローの中でどう便利に使えるか」という体験価値の競争へシフトしていることを示しています。利用端末に応じた機能最適化が進んでおり、ユーザーの裾野を広げる動きと言えます。
出典:Google「New updates to the Gemini app, December 2025(Gemini Drop)」
5:【クリエイティブ】Runway「Gen-4.5」公開とAdobe提携(12月1日・18日)
動画生成AIのRunwayが、品質とプロンプト追従性を高めた「Gen-4.5」を公開しました。さらにAdobeとの提携により、Adobe Fireflyのエコシステム内での提供も発表されています。
静止画に続き、ついに「動画生成」がプロフェッショナルの制作フローに本格的に組み込まれる段階に来ました。広告、SNS、採用動画などの制作において、コスト構造やスピード感が劇的に変わる可能性があります。同時に、権利関係や素材管理のリスクマネジメントも重要な論点となります。
出典:Runway「Introducing Runway Gen-4.5」|Adobe「Adobe and Runway Partner…」
6:【ビジネス実装】Microsoft 365 Copilotが「業務アプリ内AI」を拡張(12月17日)
Microsoftは、ExcelのAgent ModeやPowerPointの画像編集機能など、Microsoft 365アプリ内でのCopilot機能拡張をまとめて公開しました。
生成AIが単なる「チャットボット」から、各業務アプリ内に常駐して作業を代行する「エージェント」へと進化していることを象徴しています。企業にとっては、現場の生産性向上への期待とともに、管理者視点での権限設定やログ監視などの運用設計がより重要になってきます。
出典:Microsoft「What’s New in Microsoft 365 Copilot | November & December 2025」
7:【国産LLM】楽天が「Rakuten AI 3.0」を発表(12月18日)
楽天グループが、日本語特化のLLM「Rakuten AI 3.0」を発表しました。経済産業省主導のGENIACプロジェクトとの関連も明記されており、国産基盤モデルの開発が進んでいます。
これまでの研究開発フェーズから、社会実装やコスト最適化を重視するフェーズへと移行しつつあります。楽天エコシステム内での適用をはじめ、日本の商習慣や言語ニュアンスに強いAIとして、具体的な利用シーンの広がりに注目が集まります。
出典:楽天グループ株式会社「Rakuten AI 3.0」プレスリリース(2025/12/18)
8:【ビジネス実装】NTTデータ、シリコンバレー新会社「AIVista」本格始動(12月9日)
NTTデータが設立したAI新会社「NTT DATA AIVista」のCEO就任が発表され、事業が本格始動しました。
これは日本企業のAI戦略が、単なる「社内活用」に留まらず、AIネイティブな事業を米国のエコシステムの中で構築しようとする挑戦的な事例です。グローバル市場における日本発AI企業のプレゼンス向上や、最先端技術の国内への還元が期待されます。
出典:NTT DATA「NTT DATA AIVista CEO Announcement(2025/12/9)」
9:【ガバナンス】日本政府、「AI適正性確保に関する指針」を決定(12月19日)
人工知能戦略本部が、AI法に基づく「AI適正性確保に関する指針」を公表しました。人間中心、公平性、透明性、アカウンタビリティなど、AI事業者が守るべき要素が整理されています。
これは企業にとって「新たな義務」と捉えるよりも、「求められる説明責任や体制が明確に言語化された」と捉えるべきニュースです。社内規定の整備やリスク評価の基準として、この指針が今後の実務的な拠り所となります。
出典:内閣府(科学技術・イノベーション)「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針(PDF)」
10:【ガバナンス】日本政府、「人工知能基本計画」を閣議決定(12月23日)
日本政府が、次期「人工知能基本計画」を閣議決定しました。AIを「使う」「創る」だけでなく、「信頼性を高める(ガバナンス)」「協働する(人材・制度)」という包括的な方向性が示されました。
今後の国の調達方針や支援策、評価基盤の整備などはこの計画に基づいて進められます。自治体や大企業だけでなく、AIスタートアップにとっても、事業戦略や優先順位を検討する上で無視できない羅針盤となります。
出典:内閣府(科学技術・イノベーション)「人工知能基本計画」
まとめ:2025年12月のAIニュース
2025年12月は、AI技術の「社会実装への深化」と、それを支える「ルールの整備」が進んだ1ヶ月でした。
OpenAIやGoogleによるモデルのアップデートは、単なる性能向上から「実務での安定性・使いやすさ」へと焦点を移しています。また、RunwayとAdobeの提携に見られるように、クリエイティブの現場でもAIは「実験ツール」から「プロの道具」へと昇華しました。
一方、日本国内では「指針」や「基本計画」が策定され、企業がAIを安全かつ効果的に活用するための土台が整いました。
2025年は「生成AIの可能性」に驚いた1年でしたが、2026年はそれらを前提とした「実利と責任」が問われる年になるでしょう。来月以降は、更新されたモデルの実運用評価や、策定されたルールに基づく社内ガバナンスの構築が、ビジネスの現場における主要なテーマとなりそうです。
