2025年11月は、AI業界の歴史に刻まれるであろう「モデル刷新ラッシュ」の月となりました。
10月がNTTやソフトバンクによる「国産LLMの始動」という足場固めの月だったのに対し、11月はグローバルテックジャイアントたちが一斉にアクセルを踏み込みました。OpenAI、Google、Anthropic、xAIの4社すべてが主力モデルのアップデートを行い、性能競争は新たな次元へと突入しています。
また、ChatGPTへの「グループチャット」機能追加や、Meta AIの日本上陸は、AIが個人のツールから「他者とのコミュニケーション」の中に介在する存在へと変化したことを示唆しています。モデルの進化と、生活への浸透。その双方が劇的に加速した2025年11月の主要ニュースを解説します。
2025年11月の主要AIニュース
それでは、2025年11月に起こった主要なAI関連ニュースを時系列でご紹介します。
1:【新モデル】OpenAI、ChatGPTを強化する新フラッグシップ「GPT-5.1」リリース(11月7日)
OpenAIが、GPT-5の公開から半年を経て、改良版となる「GPT-5.1」をリリースしました。推論能力とコード生成精度が大幅に向上しており、特に複雑なタスクにおける「思考の粘り強さ」が強化されています。同時にAPIのレスポンス速度も改善され、実務での利用ハードルがさらに下がりました。
出典:OpenAI「Introducing GPT-5.1」
2:【新モデル】Google、次世代マルチモーダルモデル「Gemini 3 Pro」発表(11月13日)
Googleが、DeepMindの最新研究を反映した「Gemini 3 Pro」を発表しました。テキスト・音声・画像の理解力が向上したほか、最大の注目は動画生成に特化した新モデル「Gemini Nano Banana」のサプライズ発表です。モバイル端末でも動作する軽量さを持ちながら、高品質なショート動画を瞬時に生成可能で、クリエイター層に衝撃を与えています。
出典:Google Blog「Introducing Gemini 3」
3:【新モデル】Anthropic、エージェント特化の最上位モデル「Claude Opus 4.5」提供開始(11月16日)
Anthropicは、PC操作や複雑なワークフローの自律実行に特化した「Claude Opus 4.5」をリリースしました。従来モデルと比較して、長時間のタスク実行におけるエラー率が大幅に低下しており、「Computer Use(PC操作機能)」の安定性が実用域に達したと評価されています。
出典:Anthropic News「Claude Opus 4.5」
4:【新モデル】xAI、「Grok 4.1」公開でフラッグシップモデルを刷新(11月19日)
イーロン・マスク氏率いるxAIが「Grok 4.1」を公開しました。X(旧Twitter)上のリアルタイム情報へのアクセス性能が強化されたほか、数学・論理的推論のベンチマークで他社トップモデルに並ぶスコアを記録。推論速度の速さも特徴で、プレミアムユーザーへの展開が加速しています。
出典:xAI「Announcing Grok 4.1」
5:【プラットフォーム】ChatGPTに「グループチャット」機能が追加、グローバル提供を開始(11月21日)
ChatGPTに、複数人とAIが同時に会話できる「グループチャット」機能が実装されました。これにより、家族の旅行計画やビジネスチームのブレインストーミングにAIが「メンバーの一員」として参加可能になります。AI利用が個人的な作業から、コラボレーションの場へと拡張されました。
出典:OpenAI「Group Chats in ChatGPT」
6:【プラットフォーム】ChatGPT、「Shopping Research」で商品比較に特化した新体験を提供開始(11月23日)
ChatGPTの新たな検索体験として、商品比較に特化した「Shopping Research」が追加されました。曖昧な要望から最適な商品を提案し、スペック比較表を自動生成します。一方で、Amazonなど一部のECサイトはこの機能からのアクセスを制限する動きを見せており、AIとECの緊張関係も浮き彫りになっています。
出典:OpenAI「ChatGPT Shopping Research」
7:【グローバル】Meta AI、日本で正式提供開始 ─ InstagramやFacebookで利用可能に(11月25日)
Meta社のAIアシスタント「Meta AI」が、ついに日本での提供を開始しました。Instagram、Facebook、Messenger、WhatsAppの各アプリ内で、検索や画像生成、チャットが利用可能になります。月間数千万人の国内ユーザーを持つSNSにAIが統合されたことで、AIの普及率が一気に高まると予想されます。
出典:Meta Newsroom「Meta AI availability in Japan」
8:【国産LLM】ソフトバンクの「Sarashina API」発表とSakana AIの大型調達で国産基盤モデルが加速(11月5日・11日)
ソフトバンクが国産LLM「Sarashina」のAPI公開を発表し、開発者への提供を開始しました。また、Sakana AIがシリーズBラウンドでの大型資金調達を発表。日本特有の商習慣や言語ニュアンスに強い「国産基盤モデル」のエコシステムが、資金・技術の両面で急速に拡大しています。
出典:ソフトバンク「Sarashina API公開」
9:【ビジネス実装】ねんきんチャットボットやソラカメAI、日東電工など、日本の行政・企業で生成AI活用が具体化(11月6日)
日本年金機構による対話型AIの導入、ソラコムのカメラAIサービス「ソラカメAI」の進化、日東電工とIBMによるAI活用BPOなど、具体的かつ大規模な実装事例が相次ぎました。AIが「実験的なツール」から、社会インフラや製造現場の実務を担うフェーズへ移行していることを象徴しています。
出典:日本年金機構「チャットボット導入について」
10:【ガバナンス】日本の「人工知能基本計画」骨子公表と、EU・中国を含む国際的なAI規制・未成年保護議論の進展(11月21日)
日本政府が次期「人工知能基本計画」の骨子を公表し、開発と規制のバランスへの指針を示しました。一方、EU議会はSNSやAIチャットボットの利用に関する最低年齢設定を決議し、中国も生成AIのセキュリティ要件を強化。AIの影響力増大に伴い、特に未成年保護や安全性に関する国際的な包囲網が狭まっています。
出典:内閣府「AI戦略会議」
まとめ:2025年11月のAIニュース
2025年11月は、AIの進化において**「性能の頂上決戦」と「社会への浸透」**が同時に起きた稀有な月でした。
OpenAI、Google、Anthropic、xAIが揃って最新モデルを投入したことは、LLMの技術進歩が停滞するどころか、さらに加速していることを証明しています。特にGoogleが投入した動画生成モデル「Nano Banana」のような、モバイル環境でもリッチなコンテンツを生み出せる技術は、個人のクリエイションを根本から変える可能性を秘めています。
また、ChatGPTのグループチャットやMeta AIの日本展開は、AIが「PC画面の中のツール」から「生活空間のパートナー」へと変貌を遂げたことを意味します。家族の会話やSNSの中にAIが当たり前に存在する風景は、来たる2026年のスタンダードとなっていくでしょう。
12月はこれらの新モデルや新機能が、実際の年末商戦や業務の締めくくりでどのように活用されるか、その真価が問われる月となりそうです。
